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「税金とわたしたちのくらし」

2024年5月18日、岐阜県民主商工会事務局長の早野幸広さんをお招きして、ひだ法律事務所友の会第10回総会記念講演会を開催しました。 早野さんは、消費税は、事業者が代金に含める付加価値税であって「預かり税」ではなく、消費税法には消費者が負担するとは定められていないと説明されました。なお、「預かり税」でないことは、2023年2月10日衆議院内閣委員会で、当時の金子俊平財務大臣政務官がはっきり認めています。 インボイス制度の導入により、課税売上高が一千万円以下であっても、適格請求書発行事業者となれば消費税納税義務が生じます。 仕入税額控除を受けたい課税事業者はインボイスを発行できる事業者との取引を望むため、消費税の支払が免除されない適格事業者にならざるを得ず(または、消費税相当額の値引きを強いられ)、零細事業者に対する事実上の増税になっています。欧州諸国はもっと税率が高いと言われますが、食料品、水道水、医薬品、新聞、書籍、芸術など、生活必需品には広く非課税もしくは軽減税率が適用されているとのことです。輸出大企業ばかりを優遇せず、零細業者のくらしを守るためには、消費税のありかたを見直す必要があると学びました。 弁護士 漆原  

「虎に翼」

 NHK朝ドラの「虎に翼」で先日、原爆訴訟のエピソードが描かれ、一度は尋問に立つ覚悟を固めた原告の被爆者女性が社会の偏見に怯え、代理人から助言を受けて尋問を取りやめるという場面がありました。  私はこの場面にちょっと引っかかるところがありました。  原爆訴訟のように、従来の法令解釈では認めにくいけれども正義公平の観点から認められるべき事件では、法令や過去の裁判だけを根拠にしても、なかなか勝てません。  そのような事件では、尋問をはじめ様々な手段で、裁判官にできるだけ「生の事実」を伝え、新たな法理論や解釈により公平な判決を出してもらうのです。  すると、当事者が悩み怯えていても、弁護士としては「尋問をやめましょう」とはなりません。できるだけ尋問を実施する方向で、当事者を励まし、苦悩や恐怖に寄り添おうとするはずです。  ドラマでは、原告の手紙を法廷で読み上げていましたが、裁判官の目前にいる生身の人間によって語られる、反対尋問を経た証言の方が、やはり信用できます。  そんな違和感があったところ、実際の事件では、原告本人尋問を申請したが、裁判所に採用されなかったのだという、SNSの投稿を読みました。その投稿を根拠にこれが事実だと断定するつもりもないのですが、弁護士としての経験や感覚によくなじむ経過なのは確かですから、私はドラマのこの展開は創作によるものだと思いました。  創作されたのだとして、その意図は素人にはわかりませんが、裁判所の現実を乗り越えようとする主人公の姿を見せてくれたらもっと感動できたのにと、少し残念な気持ちになりました。 弁護士 川津