敵基地攻撃能力
政府は、「相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要がある」(国家安全保障戦略)として、2022年12月、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」のいわゆる安保三文書の改定を閣議決定し、相手の領域において、わが国が有効な反撃を加えることを可能とする能力(敵基地攻撃能力)を保有しようとしています。 敵基地攻撃能力とは、日本が、他国の領土をミサイルなどで直接攻撃できるようにするものです。敵の基地だけを攻撃するように読めますが、それに留まるものではありません。2022年12月の政府・与党協議では、「軍事目標」を対象とする、とされました。軍事目標とは、「物については、その性質・位置・用途または使用が軍事的行動に有効に役立つもので、かつその破壊または毀損、その捕獲または無力化がその時の状況において明確な軍事的利益をもたらすもの」と定義されます(ジュネーブ条約に対する1977年の追加議定書)。軍用施設だけでなく、民間の非軍事施設であっても、軍事的に利用されるものは広く「軍事目標」にされる可能性があるのです。 このような敵基地攻撃能力の保有及び行使は、憲法に違反するおそれがあります。日弁連や東京弁護士会をはじめ、全国の弁護士会の多くが、その保有及び行使に反対しています。 弁護士 漆原