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ひだ法律事務所

2014年4月9日水曜日

第2回 原発と人権 全国研究・交流集会 in 福島 に参加しました(漆原)


第2回 原発と人権 全国研究・交流集会

第5分科会『人類と核は共存できない~脱原発と核兵器廃絶国際ネットワーク』

2014年4月5,6日 於・福島大学

漆原の所属する日本国際法律家協会と、日本反核法律家協会のコラボ企画としてひらかれ、50名を超える参加者が熱心に耳を傾けました。漆原は、パネルディスカッションの司会を担当しました。

■基調講演: 国際法学者 山田寿則先生(明治大学)
『核兵器と原発(核の平和利用)に関わる国際的な法的枠組』
 先生は、核拡散防止条約(NPT)の成立過程について詳しく説明されました。
 NPTは、核の軍事利用と平和利用が分けられることを前提として、3本の柱(①核兵器の保有を5カ国(N5)に限る、②非保有国の平和利用は「奪い得ない権利」、③N5の軍縮に向けた交渉義務)を定めています。
 しかし、IAEAの査察を中心とした平和利用に限定するためのコントロール制度が不十分である点について、ご指摘いただきました。

■パネルディスカッション
◆弁護士 千葉恒久先生(東京)
『ドイツはどうやって脱原発を実現したか』
 原発の建設反対のためのドイツの市民運動の様子を写真入りで紹介していただきました。
 建設予定地に、何万人もの人々が集まって、そこで青空学校を作り、著名人を招いて学習会を開いたり、核廃棄物の輸送ルートに羊を放牧したり、80万人もの市民が異議申し立て手続きをしたりと、さまざまな活動がされていました。
 また、ドイツで既に40%以上を占めるに至った、再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力など)の実用・普及についても紹介されました。市民が風車を立て、自治体が発電事業を行うといった取り組みがされていました。発電コストに見合う売電を可能にするために、電気代を1%値上げするなど、広く浅く市民全体が協力している姿が印象的でした。

◆NGOフィリピンアジア太平洋移民ミッション日本代表
ブッチ・ポンゴス氏(フィリピン)
『フィリピンの原発稼働停止の取り組みと現状』

 フィリピンでは、独占資本家と外国資本による、経済的・権力的コントロールとして原発建設がされてきた背景があります。要するに、金のため、力のための原発です。
 アメリカの企業が進めたバターン原発建設に対して、経済的搾取を受けてきた市民が立ち上がり、その稼働を食い止めた経緯についてお話されました。
 しかし、現在、国内で13もの原発建設が計画されています。いずれも、外国企業が進めています。
 フィリピンでも電力需要が高まっていることは他の国々と同じですが、フィリピンは海に囲まれ、また温暖なことから、水力や太陽光発電が期待でき、またコストも低くてすむと思われる、とのことでした。

◆映画上映『不毛の地』

 ロシアの核施設コンビナートから排出される汚染水が、下流の村の住民に甚大な健康被害をもたらしている衝撃の事実について明らかにしたドキュメンタリーを上映しました。

◆平和活動家(元広島平和文化センター理事長)
スティーブン・リーパー氏(アメリカ・広島)
『核兵器廃絶に向けた運動と現状』

 核兵器も原発も、いずれもtoo dangerousであり、いずれも「核産業」が生み出すもの。核をなくすためには、まず核兵器をなくすことが第一とのご指摘でした。そのために、核兵器禁止条約の成立に向けて、新しい運動が始まっています。そのリーダーには、3つの都市(ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ)を有し、核兵器・原発のいずれの被害も経験した日本がふさわしいと強調されました。

◆NGOヒューマンライツナウ事務局長
 弁護士 伊藤和子先生(東京)
『国際的な動きをどう作るのか』
 原発前、1mSvとされていた低容量放射線の安全基準値が、経済コストを理由に、20mSvまで引き上げられ、避難区域指定が解除されています。それだけでなく、健康診断も十分に行われず、かつその結果が秘匿されてしまっています。
 これに対し、国連の特別報告者による「グローバー勧告」は、基準値を1mSvに戻し、「もっとも弱い立場にある人々の立場に立った」施策を採るように日本政府に勧告しました。さらに、原子力エネルギー政策や原子力規制に関する意思決定プロセスに、市民の意見を反映する必要があるとも述べています。
 しかし、我が国政府はすぐに60頁に及ぶ反論書を作成して、これらの勧告に従っていません。
 また、同氏は、2015に予定されている世界防災会議(仙台)や、国連の開発目標の見直しのプロジェクトにおいて、福島原発の実情を告発し、脱原発を訴えていくべきだと述べられました。

「報告集」(1000円)のお問い合わせは、TEL03-3225-1020 日本国際法律家協会まで