再審法改正を!
雪冤(せつえん),という言葉があります。無実の罪を晴らすという意味です。私たちの多くは一生,使う機会のない言葉です。
静岡4人強盗殺人・放火事件(いわゆる「袴田事件」)について,最高検察庁がまとめた報告書は,検察官が,第一次再審請求から約30年間も経過してようやく「五点の衣類」のカラー写真等の開示に応じたり,再審開始決定に対して即時抗告をしたため,再審公判開始までに約十年も要したことについて、検察官の対応には問題がなかったとしています。しかし再審の具体的な手続規定がないため,検察官の対応が問題視されることなく手続が長期化したといえます。
そこで,刑事訴訟法に再審の手続規定を定める(これを「再審法改正」と呼んでいます)ための運動が,全国で高まっています。
岐阜県弁護士会では,県市町村議会および首長に,再審法改正の賛同・意見書採択の働きかけをしています。現在(2025年3月時点)、県議会を含む22の議会で意見書が可決され、過半数に達しました。また,21名の首長から賛同署名が出されています。
飛騨地方では,2024年9月に飛騨市長,11月に高山市長,2025年3月に白川村長が賛同して下さり,高山市議会,飛騨市議会,白川村議会から,賛同署名をいただいています。
昔のようなひどい取調べはなく,DNAで科学的に犯人が分かる時代だから,えん罪はもう起きない…と言いきれるでしょうか。日弁連が支援し、2010年以降に無罪が確定した件は7件,いまも続いている再審事件は11件あります。
袴田さんのように雪冤に50年も費やすような刑事手続は,私たちの代で改める責任があると考えます。
弁護士 漆原